携帯が無い! | いま、蒼い小道で。

携帯が無い!

今や現代人の必需品となってしまった携帯電話。
無くしてしまおうものなら、友人など他人とのコミュニケーション手段が
一瞬にして断たれてしまう。。
いや、一瞬ならまだいい。
もしメモリーのバックアップをとっていないものなら、
永遠に連絡をとることのできない旧友さえ発生しかねない。
そんな状況に、今日僕はなりました。


明日は下宿先へ戻る日。地元最後の日を悠々と過ごしていた時、ふと思いたった。いや、正確には思い出した。
「じもてぃー帰ったらおみやげよろしく!」
確かにそう言っていた。我が友が。
しかし明日乗る新幹線は早朝に発車するので、おみやげを買う暇はないかもしれない。だとすれば、今日買うしかないだろう。

仕方なく、日も暮れてきたころに自転車を走らせて、
最寄の駅前で饅頭とかを適当に買ってきた。
で、俺が店を出ると同時に、おばちゃんシャッター閉めてた。
ギリギリセーフだったらしい。
「今日はツイてるな。」なんて鼻歌交じりに家路についたのはいいが、
家に着いて5分後。・・・携帯がなかった。
「えっ?うそだよね、どっかに落ちてるんだよね?」
そう言い聞かせて必死で家の中を散策したが、どこにもない。
―――最悪のシナリオが頭に浮かぶ。

どっかに落とした落とした落としたオトシタ・・・・

ああぁぁ!外はもう夜。しかも寒い。
でも、行くしかない・・。可能性も薄いけど。
発見率を高めるため、今度は徒歩。懐中電灯装備で。デッカイやつね。
姉に携帯を借り、電話をかけつつ懐中電灯で地面を照らす。
ない・・・・ない・・・ない・・・
思いも虚しく、携帯は一向に見つかる気配がない。
時間が経つにつれて、自分も諦めムードになってきた。

機種変更っていくらかかんのかなぁ・・あ、俺まだ一年経ってないや。
あぁ・・電話帳、メモリースティックに保存して、本体に入れたままだ。
意味、ない、じゃーん。
電話帳悪用されねぇかなぁ。迷惑メールとかたくさん行ったらごめんね、みんな。
あ、ドコモに電話止めてもらわないと・・やべ、先月分滞納してたっけ。

そしてUターン地点。もう9割方諦めて、帰路についたその時。。
「あ・・?あ、あった!あった!」
それは、電信柱の影にチョコーンと佇んでいた。
それをヒョイと拾い上げ、まじまじと見つめていると、近くにいたおばちゃんが声をかけてきた。
「それ、あなたの?」
「あ、ハイ。ずっと探してたんですよ。」
「あら、そう。さっき落ちてるのに気が付いて、踏まれないように道の脇によけておいたから。」
「え!?そうでしたか。それはどうもありがとうございました。」
「いえいえ。いま丁度、向かいコンビニの店員さんに言ってきたところなのよ。携帯探しに来た人いたら教えてあげてって。私仕事があって、見ていられないから。」
「えっ・・・」
携帯が見つかったことより、その心遣いに泣きたくなった。
この世の中も捨てたもんじゃないのかもしれない。
それから、諦めずに信じることも、時には大事なんだってことに気づいた。

他人事で済ませば、それまでかもしれない。だけど、その時にそっと肩を貸してあげることは、とても大切なことだ。